オズミートAUS-MEAT (The Authority for Uniform Specification for Meat and Livestock食肉畜産統一規格局) は、MLAMeat and Livestock Australia豪州食肉家畜生産者事業団)の傘下機関として、家畜の生体から食肉に至る全ての畜産用語とオーストラリア全国共通の規格を設定・管理する機関です。設定だけではなく、管理徹底のための教育・広報活動もしています。

この章では、同機関が定める温と体枝肉 (hot carcass) の規格・判定と、冷と体枝肉 (chilled carcass) の判定=チラーアセスメント、さらに用語の定義及び製品のカートン表示等について詳述するとともに、著者独自の分析をおこないます。したがい諸表の中心となるデータはAUS-MEATまたはMLAの資料によっていますが、全面的に著者による付加と解釈で表が構成されています。従い翻訳表現、解釈、位置付け等の責任は著者にあります。また試みの規格設定も合わせて紹介します。

 

 

A.      温と体枝肉

 

 

1.    整形

 

と畜直後、図の整形規格に従って枝肉として不要な部分を切除して整形されたものが「標準温と体枝肉」 (Hot Standard Carcass = HSC) です。これを基準に温と体判定及び冷と体判定(チラーアセスメント)を行います。

 

以下がAUS-MEATによる標準温屠体枝肉の厳密な定義です。

 

a)      屠畜処理

標準牛枝肉または標準子牛枝肉とは、以下の処理を行った牛畜の屠体(とたい)のことである。

(1)      放血
(2)      剥皮(はくひ)
(3)      全ての体内の消化・呼吸・排出・生殖・循環器官の除去

 

(4)      人間用の消費に適合するために必要とする、食肉検査官による最低限のトリミング
(5)      特にイスラム式と畜 (Halal slaughter)を行った場合は、食道周りの内容物(食物)による汚染の完全防止を遵守(じゅんしゅ)する上で、首および首部分のトリミングを行う。この標準枝肉整形の処理は衛生上の整形に限定するものとし、MSQAプログラムにより管理するものとする。

 

b)      割除(かつじょ)

割除部分、方法は以下の通りとする。

(1)      (こう)頭骨(とうこつ)と第1頚椎(けいつい)間で、首の筋肉に対し直角で真直ぐに頭部を除去する。
(2)      (しゅ)(こん)(こつ)/中手骨間で前肢(ぜんし)を除去、足根骨/中足骨間で後肢を除去する。
(3)      仙椎・尾椎間で尾を除去。
(4)      胸腔(きょうくう)腹腔(ふくくう)面になるべく近く膜を剥ぎ取ることで、「はらみ」(シンスカート)と「さがり」(シックスカート)を除去する。背割りしない子牛枝肉の場合は、シンスカートは取らずにそのままにしておく。
(5)      腎臓及び腎臓脂肪と恥骨周辺脂肪の除去。背割りしない子牛枝肉の場合は、恥骨周辺脂肪は取らずにそのままにしておく。
(6)      乳房、睾丸(こうがん)又は(いん)(けい)浅鼠蹊(せんそけい)脂肪を含む下腹部脂肪の除去。
(7)      坐骨結節から仙・尾椎関節に至る、骨盤腔("BALD SPOT")の縁の脂肪と骨盤腔脂肪を仙・坐骨靭帯(じんたい)(あらわ)になるまで除去する。 
(8)      トップサイドの縁の過剰脂肪を下の肉面から1CM以内に整形する。
(9)      胸骨の剣状軟骨突起と胸腔内面脂肪を除去する。
(10)    ブリスケット外側の過剰な脂肪は、胸部切開時の鋸による切断面に対し90度の角度にナイフを入れ、下部の肉面から1CM以内に整形する。

 

c)      計量

計量は標準温屠体枝肉(HSCW = Hot Standard Carcase Weight) の重量をもって行う。

 

 

d)      割除部分の図解

図に示した部位は割除もしくは整形の対象となっている部分です。このHSCが各工場一律で共通の標準となっています。

 

データソース:Aus-meatから翻訳作図

 

 


 


2.   枝肉の判定 (枝肉チケットの読み方)

標準枝肉として整形された温と体は、と畜2時間以内に下表の項目についてチェックを受け、図の枝肉チケット(carcass ticket)を付されます。通常枝肉を水で洗浄する直前に前肢にチケットを付けます。

このチケットのデザインについては定型フォームというものはありませんが、AUS-MEATの求める事項についは記載必須条件で、記載方法もAUS-MEATのチェックが必要です。従い各パッカーの共通性があります。

その外の生産工場にとり必要な事項についてはもちろん記載自由です。以下は最も基本的なチケットの記載例となっています。

 

温と体枝肉チケット

温と体枝肉チケットの読み方

アルファベット

 

項  目

 

意   味

 

 記入例:()内は意味   

-

チケット発行社名 (Est.No.)

EAN 食肉会社

Body / Side

個体認識番号

"403L"        (L:左半丸枝肉, R:右半丸枝肉)

Slaughter Date

と畜年月日

"21 JUL 02"  (200272)

Hot Weight

温と体半丸重量-1

"27.20" kg

Sex

性別

"F"  Femaleメス)、      (M”=Male)

DENTition

永久門歯の数

"0"         (0本歯)

CATegory

牛の分類

Y” (yearlingイーリング)、   ("S "steer:ヌキ)

Fat D*ー2

第3仙骨の表面脂肪の厚さ (P8)

"35"       (35mm)

Lot

受け入れ番号

"30"         (コード番号)

Bruise*ー3

「あたり」

「あたり」の程度

OPERator

購入先 (フィードロット名等)

"CC"        (コード番号)

DESTination

仕向け先

"M2"          (コード番号)

 

*註:    1.標準温と体重量(HSCW=Hot Standard Carcass Weight):次項のチラーアセスメントの歩留り評価に使用される一方、生体出荷者に対する代金決済("OTH"-"Over the Hooks"購入 方式)にも利用されます。オプションで重量区分番号があります。と畜後2時間以内に計量されます。

          2.第3仙椎部分の脂肪の厚さで、HSCWと同様厚さの度合の区分番号があります。

3.Bruising(あたり)については、直径100mm以上、又は深さ20mm以上の損傷の重大なものがある枝肉については、その損傷箇所(部位)及び損傷数により1〜9(軽度〜重度)に分類・報告されます。

枝肉チケットの管理システムでは、カートン詰めの製品管理システムと同様、一般的にはGS1規格のEANUCC 128のものを使用しています。

 

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