4.       レッドミート付加価値加工業者の上位25社のランキング

 

以下はAUS-MEAT発行の季刊誌”Feedbackの”Top 25 Red Meat Value Adding Companies” (20073月版)に、筆者が若干の加筆を行ったもので、レッドミート(牛肉・羊肉)の付加価値加工(カッティング等も含む)企業の上位25社の2006年1-12月実績のランキングとなっています。

これらの会社は、業務用、小売用の加工度の低い部分肉、スライス (ポーションコントロール含む)、ひき肉製造から、缶詰、加工度の高いハムやローストビーフ (スモールグッズ small goodsと呼びます) などを加工販売(輸出含む)しています。具体的には、パテなどのひき肉商品が26%、スモールグッズが22%,ポーションコントロールが21%、ミートパイなどのスナックが14%、缶詰等の常温流通品8%、ピザトッピングが6%、その他3%となっています。

従いここには日本で言えば、屠場から枝肉を仕入れ部分肉に加工するスターゼン、小川畜産などの卸業者や、日本ハム、伊藤ハムなどのハムソーメーカーが含まれています。ランキングは2006年の原料のレッドミート(牛肉と羊肉)の総使用量約20万トンのそれぞれの実績シェアを基にしています。

 

順位

              

日本での通称

レッドミート使用量 (トン)

従業員数

1

Primo Smallgoods

プリモ

24,640

620

2

OSI International Foods

オーエスアイ

22,200

160

3

The Top Cut Group

トップカット

17,900

800

4

Comgroup Supplies P/L

コムグループ

16,300

160

5

Somerville Retail Services

サマービル

15,200

410

6

Beak and Johnston P/L

ビークアンドジョンストン

14,000

300

7

Australian Country Choice P/L

エーシーシー

13,350

780

8

Heinz Watties Limited

ハインズ

12,800

200

9

Australian Food Corporation P/L

オーストラリアンフード

10,500

100

10

Patties Foods P/L

パティーズ

7,600

400

11

Hans Continental Small Goods

ハンズ

7,500

1,100

12

Tender Plus P/L

テンダープラス

5,800

180

13

Tatiara Meat Company

タチアラ

5,000

非公表

14

非公表

-

4,800

-

15

Goerge Weston Foods Limited

ジョージ・ウェストン

4,250

1,200

16

Mrs Macs P/L

ミセス・マックス

3,880

485

17

Australia Meat Holdings

エーエムエイチ

3,600

80

18

Challenge Meats P/L

チャレンジミート

3,100

55

19

Newland Food Company P/L

ニューランド

2,750

24

20

Marathon Food Industries P/L

マラソン・フード

2,600

85

21

Cleavers Organic Meats P/L

クリーバー

2,400

29

22

Scorpio Meats

スコーピオ

1,850

21

23

Hastings Food Processing P/L

ヘイスチングス

1,600

50

24

Cook Freeze P/L

クックフリーズ

1,050

80

25

The Pasta Master P/L

パスタマスター

1,000

非公表

 

 

参考 ニュージーランドの上位パッカー8社

 

同国には食肉輸出ライセンスを所有するパッカーは29社(64工場)あります。1992年実績では8社の内訳は以下のとおりで、これら上位8社のシェアは輸出用牛肉で82%、輸出用マトンで87%を占めており、オーストラリアとは大いに様相を異にしています。

 

 

会社名

 

所有形態

 

工場数

輸出用生産シェア(%)

牛肉

羊肉

Affco New Zealand

生産者組合

15

26

10

Alliance Group Ltd

生産者組合

-NA-

-NA-

Fortex Group Ltd

私企業

.

Huttons Kiwi Ltd

私企業

Lowe Walker Nz Ltd

私企業

17

.

PPCS

生産者組合

-NA-

-NA-

Richmond Ltd

私企業

-NA-

-NA-

Weddel NZ Ltd*

私企業

13

15.

.

註:アルファベット順。ーNAーは数字の公開なし。

Weddel NZ1994年オーストラリアに引き続き倒産。銀行管財下に入った。また近代的な設備で知られるFortex社も同年倒産しました。

 

5. 国内向け専用工場

 

オーストラリアの牛肉の全生産量の約4割を担う国内向け生産について、その生産主要州であるニューサウスウェールズとビクトリア両州の有力なパッカーを次表に掲げます。国内向けパッカーの上位3位までが大消費都市シドニーとメルボルンをひかえたニューサウスウェールズ州とヴィクトリア州に所在しており、クィーンズランド州は輸出中心の州である事がここでも明らかです。

これらの国内向け食肉工場は現在のところ輸出ライセンスを所有していませんが、とくにCIの工場の中にはいつでもライセンスを取得できるだけの設備を持ったものもあります。

 

ニューサウスウェールズ州とビクトリア州の有力な国内向け専用と場の概要

 

 

州名

   

 

企業名

 

 

所在地

       

EST

NO.

-

*註

と畜頭数/

備考

ニューサウスウェールズ州

 

P.D.Mulligan

 

Cowra

 

25N

 

CI

 

400

国内向け専用と場全豪第1位。SYDの大手食肉卸売小売を兼営。Canberraにも国内向けと場を所有。詳細は「上位25社」の項参照。

Wadlang Group (Deringula Meats P/L)

Scorne

71N

CI

-NA-

 

Coona -Barabran

-NA-

CII

150

Tamworth City Council

Tamworth

72N

CI

-NA-

市営

J.R.Burnett

Kurri Kurri

-NA-

CII

100

ボーニングルームなし。

Beers Butcheries P/L

Culcairn

38N

CI

240

同地区には、と畜設備のみ。アデレードにボーニングルームを持つ。

G.M.Scott P/L

Cootamundra

35N

CI

80

同地区には別資本のCootamundra Battoir (EST33N)あり。

Barrangong Abbattoir

Young

85N

CI

40

 

Ray Dorahy & Sons

 

Cooma

 

-NA-

 

CI

 

100

ボーニングルームなし。と畜設備は近代的。"MONARO"(ブラックアンガス)で有名。

ビクトリア州

Ballan Abattoir P/L

Ballan

4V

-NA-

300

1981年に買収。小規模ボーニングルームを持つ。

 

M.C.Herd

 

Corio

 

13V

 

-NA-

 

600

国内向け専用と場全豪第2位。(「上位25社」の項参照。)メルボルンにも別のボーニングルーム(200頭処理)を持つ。19954月豪州食肉工場として初めてISO9002(国際標準化機構)の認定を受けた。

G&B Gathercole

Carrum

-NA-

CI

-NA-

国内向け専用と場全豪第3位

Tatura

-NA-

-NA-

-NA-

1974 年設立。同族系。CARRUM

Wangaratta

-NA-

-NA-

-NA-

工場は輸出ライセンス取得の予定。

Penny & Lang P/L

Carisbrook

20V

-NA-

170

ボーニングルームなし。

Cobram Abattoir P/L

Cobram

88V

-NA-

300

1977年工場設立。ボーニングルームあり。

 

    註:「級」については別項「食肉工場の許認可機関」参照

 

6.       U向け輸出認定工場とHGP (成長ホルモン)

 

U向け輸出認定工場

 

U(当時EC)はその域内諸国の累積在庫が極端に増加してきていた(1993年初頭109万トン)こともあり、年々その輸入条件を厳しいものにしてきていました。この理由で1990年代までは豪州のEC向け輸出認可を取得している工場は非常に少なく、わずか17工場でしたが、2008年現在では倍増し、次の通り35工場となっています。なお表中の屠畜の欄は、屠畜施設の無い(または認可されていない)工場を×で表しています。付いていない工場は、ボーニングルームとともに屠畜施設も認可されています。

 

企業名

工場番号(所在地)

畜種

屠畜*

ニューサウスウェールズ州

(6工場)

Northern Co-Op

Est.0239 (Casino)

 

Wingham Abattoir

Est.0154 (Wingham)

 

Ramsey Food Processing P/L

Est.0157 (South Grafton)

 

Southern Meats P/L

Est.0217 (Goulburn)

山羊、羊

 

Peel Valley Exporters

Est.0394 (Tamworth)

 

Fletcher Intl Exports P/L

Est.2309 (Dubbo)

 

クイーンズランド州

12工場)

Consolidated Meat Group

Est.0007 (Rockhampton)

 

Swift Australia P/L (Beef City)

Est.0170 (Purrawunda)

 

Swift Australia P/L

Est.0235 (Dinmore)

 

Teys Bros Pty Ltd

Est.0294 (Beenleigh)

 

Oakey Abattoir P/L (日ハム)

Est.0558 (Oakey)

 

Thomas Borthwick & Sons (日ハム)

Est.0067 (Mackay)

 

Western Exporters P/L

Est.0101 (Charlesville)

山羊、羊

 

Stanbroke Beef P/L

Est.0203 (Grantham)

 

Southern Queensland Exporters

Est.0344 (Wallangarra)

山羊、羊

 

Teys Food Services P/L

Est.0347 (Hemmant)

牛、羊

×

Swift Australia P/L

Est.0654 (Riverview)

×

Meramist P/L

Est.3416 (Caboolture)

牛、馬

 

ビクトリア州

9工場)

G & K OConnor P/L

Est.1265 (Pakenham)

 

Castricum Bros P/L

Est.3085 (Dandenong)

牛、羊

 

CRF (ColacOtway) P/L

Est.0282 (Colac)

牛、羊

 

Tatiara Meat Company P/L

Est.0389 (Laverton North)

×

Swift Australia (Southern) P/L

Est.0397 (Cobram)

牛、羊

 

Swift Australia (Southern) P/L

Est.0688 (Brooklyn)

牛、羊

 

Australian Lamb Co. P/L

Est.0689 (Sunshine)

×

The Game Meats Co. of Aust

Est.2019 (Eurobin)

山羊

 

Crown Meats P/L

Est.2773 (Dandenong)

牛、山羊、羊

×

南オーストラリア州

5工場)

Teys Bros Pty Ltd

Est.0423 (Naracoote)

 

T&R (Murray Bridge) P/L

Est.0533 (Murray Bridge)

牛、山羊、羊

 

Metro Velda P/L

Est.0750 (Peterborough)

 

Lobethal Australia P/L

Est.0866 (Lobethal)

牛、羊

 

Tatiara MeatCo.P/L

Est.1614 (Bordertown)

 

タスマニア州 (1工場)

Swift Australia (Southern) P/L

Est.0195 (Longford)

牛、羊

 

西オーストラリア州

(3工場)

Benale P/L

Est.0008 (Narricup)

 

Western Aust Meat Marketing

Est.0572 (Katanning)

山羊、羊

 

 

成長促進ホルモン剤の制限

 

Uは、工場の衛生条件以外にも生体の成長促進ホルモン剤(HGP=Hormonal Growth Promotants)の投与等にも厳しい規制を課しており、1988年理事会通達88/146で治療目的以外はすべて使用禁止とし、19891月HGP投与処理の食肉、内臓(豪州からの輸出が特に多い)の輸入を全面禁止しました。

 

人口物質であるゼラノール(商品名「RALGRO」等に含まれる)は検出可能でNRS(全国残留物調査)でMAX 0.02ppmに規制されていますが、自然物質であるエストラジオール、プロゲステロン(同「SYNOVEX」、「COMPUDOSE」などに含まれる。)等は、生体が本来生理として体内で生成する物質でもある為、投与の事実が判明できない背景もあります。豪州政府が許可している成長促進ホルモンは、次表のとおりです。(内容はほぼ米国と同様。)

 

豪州政府使用許可の成長促進ホルモン(HGP)名(1993年現在)

天然/人工の別

 

商 品 名

 

成 分 名

 一頭分投与量(mg)

 

効 果、 他

天然

シノベックスーS

(SYNOVEX-S)

プロゲステロン

(PROGESTERONE)

(黄体ホルモン)

 200

・400LB以上の去勢牛(STEERS)

・100〜200日に1〜2筒使用

・エストラジオールは雌豚の卵巣から抽出

・1筒当り約1,000

エストラジオール・ベンゾエート

(ESTRADIOL BENZOATE)

(卵胞ホルモン) 

 20

220mg

(1筒中)

シノベックスーC

SYNOVEX-C)

同上2種

 100 

  10 

計110mg

・400LB以下の子牛(CALVES)

シノベックスーH

(SYNOVEXH)

テストステロン・プロピオネート

(TESTOSTERONE PROPIONATE)

(男性ホルモン)

200

 

 

・400LB以上の初妊牛(HEIFERS) 用

エストラジオール・ベンゾネート

(ESTRADIOL BENZONATE) (卵胞ホルモン)

 20 

220mg

コンパドーズ-200-400

(COMPUDOSE-200

-400)

エストラジオール

(ESTRADIOL)

24/45mg

・上欄「シノベックス」参照

 

人工

(合成)

ラルグロ

(RALGRO)

ゼラノール (ZERANOL)

(合成型卵胞ホルモン)

36mg

・有効期間:90〜120日

・増体重10%up

・飼料効率8%up

フィナプリックス

(FINAPLIX)

トレンボロン・アセテート

(TRENBOLONE ACETATE)

(合成型男性ホルモン)

140mg

・有効期間:63日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上の他豪州政府が使用を許可しているものに以下3商品があるが、詳細は不明。

1.Revalor Steer Growth Promotant and Finishing Implant

2.ZERAPEL (ZERANOL系と思われる。)

3.STEEREX

 

Uのこうした安全証明の要求(理事会通達86/469の検査手続による)で、19931月豪州政府は成長促進ホルモン剤処理の有無を確認するため、家畜市場(Sale Yard)で扱うEU向けのホルモン未処理生体にはその尾の付け根にピンクのペンキ(掌大で「ピンクペイント」と呼ばれる)又はテールタッグ(尾標)で目印をすることとしました。かつ全てのEU向けでホルモン未処理の生牛には所謂「ピンクシート」による書類申告の義務付け及び同書類の2年間保管義務を決定し、同年4月5日から施行しました。(違反者には12ヵ月の禁固刑、2千豪ドルの罰金のいずれか又は両方の刑が課せられる。現に19957月クィーンズランド州で課刑者が出た。)

 

豪州では成長促進ホルモンの使用は、ほぼフィードロットでの肥育期間中に限られており、グラスフェッドの生体に対する使用は非常に少なく、家畜市場における生体の90%以上は未処理牛です。ナンセンスなことではあるが、EUへの内臓輸出を保守するため、豪州業界はこれら全てに付標せねばならないことになりました。なおHGP処理牛については、申請書のほか生体に三角形の耳標を付けることになっています。

 

又州別のフィードロットでのH.G.P.の使用率は、19932月現在以下のとおりとなっています。

     ヴィクトリア州                            :80%

     クィーンズランド州                    :72%

     ニューサウスウェールズ州         :71%

     西オーストラリア州                    :60%

 

EUの牛肉輸入の無税枠

 

2010年1月EUは豪州産高級牛肉(穀物肥育)を無税枠の対象として承認しました。

EUにおける牛肉の通常輸入関税は20%となっていますが、この無税枠は2009年8月にEUが対象国を米国として、穀物肥育の高級牛肉に限定し新設(年間20,000トン)したものです。これに対し豪州政府は、2009年5月に米EU間でホルモン牛肉紛争に関する暫定合意がなされて以来、EUに対しWTOルールに従って、豪州産高級牛肉を無税枠の対象とするよう働きかけていました。

 

なお、2008/09年度(7月〜6月)のEU向け牛肉輸出量はわずか1万トン程度(牛肉輸出総量の1%程度)であり、豪州にとってEUは大きな市場ではありません。また、EUの以下の無税枠適用条件を満たす高級牛肉を生産、加工できる施設は豪州では限られています。

 

@    HGPフリー

A    屠畜前100日間の穀物肥育

B    EUに承認された食肉処理施設での加工など

 

しかし、業界では豪ドル高により牛肉輸出が低迷している時期の、20%の関税の一部無税化を歓迎し、また豪州がEUの厳しい条件に適合する衛生的・安全な牛肉供給国として承認されたことは、豪州産牛肉の地位をいっそう高めるとしています。


 

7.       <記録> 豪州食肉業界の再編成19702010

 

1.                            第1期:国内資本の浮沈

 

第1次オイルショック後(第1次日本資本の進出・撤退後)から1987年前半までのオーストラリアにおける業界の再編成の動きはおおむね以下の通りです。この時期は日本資本の総撤退後ということもあり、生産合理化および資本の統一に向う民族資本同士のせめぎ合いの時期でした。

ただしここで言う民族資本には、古くからオーストラリアで生産・販売して来ているビーフパッカーの大手トーマスボースウィック社(T.B.S.)とアングリス・グループ(ANGLIS=WEDDEL)を含んでいます。これら2社はオーストラリアの宗主国の英国からの資本の会社であり、オーストラリアにとっては一般的な外国資本とは言えないからです。

 

業界再編成の歴史(1970年代後半〜1990年頃)

旧ブランド名

工場名(ESTNO.)

 経 営 者 の 変 遷 

現ブランド

Walkers

Aberdeen (736) 

Elders IXLが買収後ブランド名変更(旧ベレデナ系)

Aberdeen

Cairns (184) 

Elderが買収後、4社カルテルに参入。AMHが経営。(旧アマグレーズ系)

Walkers

AMH

Townsville 4

同上(旧ケント系)

Biloela 399

Teysが買収(旧アマグレーズ系)

Teys

Maryborough 110

Morexが買収(旧ケント系)

Morex

Byron Bay733) 

閉鎖後観光業に売却

消滅

Morfield

Rockhampton (384) 

Metro Meatが買収後4社カルテルAMHが経営。

(その後Metroは撤退。)

Morfield

Amh

Dinmore (654) 

同上。工場は操業せず。

Anderson

Roma (535) 

Kilcoyが買収後、Morexが再買収。

Morex

Tasmeats

Camdale 751

Richardsonsが買収後、銀行管理・競売。1987Gilbertsons/住金物産(伊藤萬)が買収。

Tasmeats

Holmans

Devonport (779) 

同上。その後閉鎖。

消滅

Blue Ribbon

Launceston (135) 

同上。1987年からは、GILBY/住金物産(伊藤萬)とは分立。単独経営。但し工場所有者はGilbyで、輸出ライセンス無し。(GILBYとの協定の為。)

Blue Ribbon(輸出には使用不可)


U.M.P.

Smithton (716) 

Richardsons買収時閉鎖。1988年再開Blue Ribbonの傘下で同社唯一の牛肉輸出工場。

Blue Ribbon

Greenham

Melbourne (54) 

工場閉鎖後、Gilbertsonsと経営合同するもその後不明。

事実上消滅

Hutton

Oxley (17) 

Tancred買収後、1991年倒産・競売。(Tancred Brosの事実上の撤退。)

Oakey

Oakey (558) 

同族系創業者Keyongが第3者に売却、その後約12億円で19874月日本ハムが買収。

Oakey

Uki

Wodonga (612) 

UKI倒産後、Associated Meatが経営。(NSWBlaney

Abattoirと同一経営)

Mcphee

King Island

King Island (790) 

倒産後Gilbertsonsが買収。

Gilbertsons

T.B.S.

Brooklyn (53) 

TBS銀行管理後閉鎖。用地売却。木箱入りチルドビーフが有名でした。

消滅

Gosford

 

Gosford (55) 

19873月、Metro MEATが買収。他のマトン生産の3工場(Murray Bridge EST533"Charles David"ブランド等)も同様買収された。

 

事実上消滅

 


 

2.                            第2期:国際化時代の到来

 

第1期の国内資本の浮沈の時期に対し、1987年以降の業界再編成は日本資本と米国資本、さらには中国資本のオーストラリア上陸に代表される国際的なビーフ戦争の開始時期と位置付けられます。

 

(ア)                      業界資本の国籍別分類

 

現在では、資本提携を解消したり撤退した企業も多いのですが、参考までにこの時期どのような業界地図となっていたのかを述べます。

 

19966月現在、オーストラリアの牛肉業界は大きく分けて下表の様に、国籍別に4つの形態に分類できます。ちなみに鶏肉を除く食肉パッカー上位25社の資本系別内訳は、民族資本系44%、外国資本系41%、公共資本系10%、生産者系5%となっています。(1994年の生産量をベースに算出したシェア。)

全パッカーに占める外資系のシェアは1996年現在実に約30%と推測され、これに対し国内には基幹産業の少なからぬ部分を外国企業に運営されている現状を批判する声が大きいのです。19971月、第一次産業相アンダーソン氏は財務省に対し、なぜオーストラリアの企業が資本の集中を図らないのか(税金の問題があると言われます)、またこれらの外資系に「利益移動(transfer pricing)」の疑いが無いか。つまりこれら外資系がオーストラリア国内で利益を出さず(税金を払わず)、母国で儲けていないかチェックするよう指示を出しました。ちなみにオーストラリアの政府を含む各界の代表は外資系の参入についてはおおむね肯定的な判断を表明しています。

 

食肉業界の国籍別資本分類 (19966月現在)

 

公共資本

QAC(QLD州立)Gunneda(郡立)Samcor(SA州立)Cudgegong(郡立)WAMC(WA州立)

オーストラリア資本

民間資本

ティーズ、ワーウィックベーコン(ジョンディー)、コンソリデイティッド・ミートグループ、ブルーリボン、キルコイ、マクフィー、カストリカム、オコーナー、ビーフランズ、ヤラーノ P/L 他中小多数

 

生産者系資本

ノーザンコープ、サウスバーネット、ダーリングダウンズ(19925月ビーフ業界からは撤退。ポーク・加工品のみ)


 

オーストラリア資本

  +

外国資本

豪州(Sugar CO.)                +日本(日本ハム)                 =TBS

豪州(Gilbertosons            +日本(住金物産                =SBAフーズ(旧ギルバートソンズ)

豪州(Kilcoy)                      +日本(野崎産業他             =ミラブック・フィードロット

豪州(G & K OConnor)      +日本(三井物産、ゼンチク)    =オコナー(1995)

豪州(Mcphee)                    +NZ(ANZCO)                      =マクフィー(1996)


 

 

日本資本

日本ハム(オーキー、ワイアラ・フィードロット、アンヴィック)、

三菱商事(キララ)、阪南畜産+三菱商事(ラックレー、ミドコ)、

丸紅(レンジャーズバレー)、伊藤ハム+三菱商事(ロックデールビーフ&フィードロット)

単独外国資本

米国資本  

コナグラ(*AMH)、カーギル(ワガワガ、ジンダリーフィードロット)、バンカーズトラスト(ゴールドコーストビーフ:但しフィードロットのみ)

 

中国資本

CITIC=中国国際信託投資会社(メトロミート)

 

その他

シンガポール資本:イスラミック Abattoir(MEL)

註:

1.   199312月AMHは、その約90%が米国のコナグラ社の資本となりました。残りはオーストラリアのD.R.Jonstone社ですが同社の株式の約半分はコナグラが所有するため、実質的にはほぼ100%の米国資本といえます。

2.  本表は1996年現在のものであり、その後は日本・中国資本の撤退など1部変化が見られる。


 

(イ)                      日本企業の第2次上陸

 

前記b)で述べた様に、1987年以降多くの日本企業が3年後の1991年4月1日の牛肉の自由化を目指し、続々とオーストラリアに上陸しました。大別してハムソーセージ加工部門を含む食肉(ビーフ)生産分野と、日本向けグレインフェッドビーフの基幹のフィードロット分野がその進出先となっています。これは1975年のオイルショック直前の第1次日本上陸が、フィーッドロット部門を主な対象としていたのとはおおいに様相を異にしていました。なお次表は、当時の単なる業務提携など「進出」の中身のない無数の「アドバルーン」は取除き、実質的な資本の進出のみを示しました。

 

食肉加工部門への日本企業の進出(実質的な進出のみ)

 

進 出 先 

 

 

進出企業名

企業(工場)名

所在地

進出形態

進出時期

三菱商事

阪南畜産

MidCoast (EST628)

MacksvilleNSW

直営(三菱:70%、阪南:30%

400万豪ドルで買収

19877

阪南畜産

三菱商事

Lachley  (EST656)

ForbesNSW

直営(阪南75%,三菱25%の共同出資)

19888

日本ハム

Oakey  (EST558)

OakeyQLD

直営(100%

19873

Metro Quality Foods(DandySmall Goods) (EST111)

MurarrieQLD

日本ハム80%Metro20%(旧Australian Bacon Ltd

198910

MackayEST67)

Bowen (EST723)

MackayBowenNSW

ピーチファーン30%,日本ハム70%

19902

Wingham (EST154)

Wingham, NSW

日本ハム100% (トーメンから買収)

19944

伊藤ハム

Rockdale Beef (EST517

Leeton, NSW

伊藤ハム90%、三菱商事10%出資。新設工場。(フィードロット一体型)

19935

(操業開始)

住金物産

(旧伊藤萬)

Tasmeats (EST751)

Hawkridge

CamdaleTAS 他

Gilbertsonsとの共同経営

198711

<第1期>

Gilbertsons全工場

MelbourneVIC 他

資本参加(40%)

(第2期でGILBY全体に出資)

19892

<第2期>

Gilbertsons右記3工場と小売店4、牧場。

Altona

(VIC,本社工場)

Loongforn(TAS)

King Island(TAS)

分離した畜産部門に資本参加(100%)

 

199611

<第3期>

ニチメン

日本精糖

Tibaldi Small Goods

EST269)

Mel(VIC)Adelaide(SA

日本精糖60%,ニチメン30%

イタリア風ハム・ソー製造

198711月、

その後フジ日本精糖100%出資

トーメン

(1994年以降日本ハムへ)

Anvic Exports (EST154

WinghamNSW

資本参加(約40%)するも、19944月日本ハムが全面買収。トーメンは撤退。

19902

旭化成

Hans Continental Small Goods(EST116327)

BrisbaneQLD

100%買収

1994年生産量倍増

19899

三井物産

ゼンチク

G & K Oconnor

(EST1265)

Packenham,VIC

資本参加:40%

1995年末

 

註:*印はハム・ソーセージ等の畜肉調整品工場。

参考:丸紅の進出は、19953月現在ICMへの出資(20%)を除くと実質的にはRangers Valley フィードロットのみで、と畜・加工については工場を持たずGunnedah Shire AbattoirまたはGilbertsons等に委託しているのが特徴です。


 

(ウ)                   AMHAustralia Meat Holdings)の成立及び変遷 (1986年以降、現在まで)

 

1986年オーストラリア畜産史上特筆すべき極めて大規模な企業合同が実現しました。しかし合同は長くは続かず、以下の経過を辿り資本の外国籍への移行・集中化(米国コナグラ社からブラジル資本の世界企業へ)に向けて進行することとなりました。この経過はオーストラリアの食肉産業の歴史のなかでも重要かつ特徴的であると判断し、ここに集録しました。なおデータはすべて当時の現地新聞などに基づいています。

 

@                            [第1期:民族資本合同期]

1986729日、ノーザンテリトリー及びクイーンズランド州に所在する下記工場の操業に関し、工場所有の4食肉企業が各25%の出資率でカルテルを組み発足しました。これら4企業が他州に所有する工場については、同カルテルに含まれず実質的には別企業として機能しました。(例;ニューサウスウェールズ州のAberdeenはエルダーの直接経営による。)本社はDinmore(EST654)に所在しTancredのカラーが強いものでした。

第1期AMHの企業別資本構成

カルテル参加企業 

工場名(但しQLDNTのみ)

Tancred Brothers 

Beaudesert            (525)

Pentland                (223)

Mt.Isa                  (1321)

Metro Meat 

Bremmer River     (654)

Rockhampton        (384)

Smorgon Consolidate

Dinmore                (235)

Marreeba

F.J.Walker 

Townsville             (4)

Cairns                    (184)

Tennant Creek

同時期での使用ブランドについては、以上参加企業の既存4ブランド(企業名そのもの)に共通ブランドの”AMH”を加え5ブランドとしました。

しかし食肉業界における既存勢力の退潮は著しく、FJWalkerElders IXLによる買収、Tancredの業界撤退、Metroの”北征”引き返し、Smorgonの縮小に繋がってゆくことになり、次の[第2期]に移行しました。

 

A                            [第2期:エルダー独占期]

19881017日、FJWalker (Elders IXL.の子会社)による単独出資となり、全面的にエルダーグループの傘下に置かれることとなりました。当時エルダーの子会社として独立企業であったビーフシティ(1976Elders Goldsborough MortFat CityLouis Dreyfusの三社が共同出資・設立。その後Elders IXLによる単独出資。)も同時に旧AMH工場とともに同組織に組み入れられ、傘下工場の一つとなりました。従ってFJWalker以外の3企業は、クイーンズランド州・ノーザンテリトリーからは撤退することになりました。

同じ頃Elders IXLAMHは、TBSからマカイ等のクイーンズランド州の2工場を買収し、オーストラリア牛肉産業の寡占化を目論みましたが、独占禁止法の問題で操業出来ず、1990年2月同2工場を日本ハムに売却せざるを得なくなりました。(結果的にAMHがTBS.から買収した物件はビクトリア州のPortland工場‐EST52、東京現地法人ー後のAMHBMDその他でした。)

 

*註:長期間採算の悪化、累積損に苦しんでいた古参英国資本のTBS(トーマス・ボースウィック・アンドサンズ)は、この2工場を含む売却によりオーストラリアからの撤退を果たしました。(以後の”TBS”=日本ハムグループとは区別されます。)


 

B                            [第3期:米国資本提携期]

1990年主に農業他部門の採算に苦しんだElders IXLは、その子会社のAMHの株式を、モンフォート社などを擁する米国の巨大食肉産業のコナグラに50%、地元の食肉企業のD.R.ジョンストンに5%売却しました。残りの45%はElders IXLの所有とし3年以内に、内20%を国内の他企業に売却する予定でした。(FIRB:外国投資審査局の制限による。)なおelders IXLは、負債産部門の売却の後、ビール部門を拡大強化し世界第4番にランクするFostersビール会社となり、その傘下としてAMHにその45%を出資するElders LTDが位置していました。(またこの時Elders IXLは米国に所有する日本向けビーフパッカーTama Meat社をもGibbon Packing-米大手食肉企業Sara Leeの子会社に売却しました。)

 

C                            [第4期:コナグラ→スイフト米国資本独占期]

1993128日、45%のエルダー保有株は当初の見方に反し国内資本には売却されず大株主のコナグラに移動しました。同社として安定経営するために3か年の間FIRBに対し根回しした結果と思われます。こうしてAMHの株主構成は米国コナグラ・ホールディングズ 90.%、D..Johnston 9.(半分はコナグラの所有)となり、オーストラリア第1位のミートパッカーはほぼ完全な米国籍の企業となりました。

その後20029月に、コナグラ社は米国内のグリーリー牛肉工場におけるO-157事故による巨額の損失を理由として、食肉部門のうち牛肉・豚肉部門の施設設備等の資産を投資会社HMキャピタル・パートナーズ社に売却したため、自動的にAMHもこの投資会社の持ち株会社であるSwiftCompany社の所有となった。
 
D                            [第5期:ブラジル資本傘下期]
HMキャピタル・パートナーズ社は2007年5月29日、同社の子会社で米国の大手食肉処理・食肉加工品製造業者であるスイフト社を、ブラジルに本社を置くJ&FパーティシペイションズS.A.社に総額約14億ドル(1,722億円:1ドル=123)で売却することを公表した。
これにより、オーストラリア・ミート・ホールディングズ社は自動的にブラジル資本となり、JBS Swift Australiaと名称変更になった。
なお、J&F社は、南米最大の食肉処理業者であるJBS社の株式を77%保有する同社の親会社であり、スイフト社の買収により、同社は世界最大の食肉処理業者となった。
JBS社はブラジルに23カ所、アルゼンチンに6カ所の食肉処理場を持つ南米最大の食肉処理業者であり、年間総売上高18億ドル(2,214億円)、牛と畜頭数は340万頭を上回る(スイフト社の牛と畜頭数は約450万頭)。
さらに20083JBS社は、豪州第4位のタスマンTasmanグループをも傘下に加えその世界戦略を着々と推進している。また2009年には南オーストラリア州の羊肉専門パッカーであるタチアラミート社を買収。翌2010年には政府に買収が合法と認められました。
 

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