D.       米国産チルドビーフの製造工程との比較と推論

「日持ち」の違いはどこから来るか?

 

これまで生体から肥育、食肉生産まで通して見てきました。

ところでグレインフェッド・チルドビーフに関し、一般的にはオーストラリア産は冷蔵状態で約75日持つといわれており、これに対しアメリカ産は約60日といわれています。

アメリカ産牛肉との比較の中で、オーストラリア産のチルドビーフの方が何故、シェルフライフが長いのでしょうか。

 

最後にこれについて以下推論してみました。

真の原因は必ず以下の中にあるはずで、それもいくつかの要因が複合したものであると考えられます。

 

項目(工程)

米国産

オーストラリア産

備考

飼料

フィードロット導入前もグレインを与える。コーンが主体。

23年間はグラスフェッド。その後は大麦、マイロが主体。

食肉のphが違うと考えられる。

月齢

2歳以内。

2歳以上。(3〜4歳が主流)

水分含有率が違う。

販売先

ほとんどが国内向けである為、製造工程、関連法規は国内での日持ちを想定している。

生産の約6割が遠くの外国向けであり、国内向よりより長い日持ちを想定し、生産管理している。

 

従業員教育

大型で1日2シフトの工場が多い為、未熟練従業員数が多く衛生教育管理が難しい。

従業員数少なく、23世代にわたる従業員多い為、衛生教育が親の世代から浸透している。

バクテリア・カウントの違いが見られる。

温と体の冷却

所謂spray chillがほとんどの工場で行われている。実際は生産歩留りの向上(12%)に寄与してるだけで、衛生上は逆効果と考えられる。

ブラストによるdry chillである。spray chillは衛生上、禁止されている。

24時間以内に、

肩芯温:5℃

モモ芯温:8℃

に下げる。

真空包装技術

「販売先」の項参照。

シュリンク後の冷却はスプレー方式が主流。

同左。

ディッピング方式が多い。

スプレー方式は、極めて温度のムラが出る。

輸出前の保管

商業冷蔵倉庫への委託保管が多く、管理に問題多い。

自社冷蔵庫を使用する為、製造後のピンホールのチェックが可能。

 

 

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